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今月の展示で会場に掲示する作家&作品の解説をご紹介します。

<展示作家紹介>

まりもったん

明治大卒後、パリで暮らし、現在は東京でフランス語教師をしながら銅版画を制作している。都会に暮らす人々の無関心とスノビズムを揶揄するような、独特の雰囲気を持った作品が特徴だが、その中にユーモアが混ざり合い、見るものの好奇心を喚起する。大胆にデフォルメされた人物や風景が紡ぎ出す画面からは、物言わぬ人々の多様な心の物語が伝わってくる。今回はパリ滞在中に撮影した写真も展示する。屋根裏部屋の窓からひょっこり顔を覗かせた猫の写真などは一見の価値がある。
個展は10月。東京、京都、そしてパリを主題にした作品を展示する。
2014-08-24-09-53-52



山原晶子

京都嵯峨芸大卒。淡い色彩を基調とした画面には、夢見るような、仄かな明るさが漂い、見るものの心を癒すような優しさがある。けれど、細部まで丁寧に創り込まれた絵の中の世界は、現代ならではの複雑さをも表している。その一つは心理的な揺らぎである。簡単に言葉にすることのできない、世界に対する悲観と楽観が入り混じったような感情がそこにはある。そしてもう一つは空間表現だ。彼女の絵の中には平穏な具象と背中合わせに、時として唐突とさえ言えるような抽象化が顔を出す。それらが幾つもせめぎ合い、重なり合うことで、絵画芸術ならではの奥行きと緊張感が生まれている。一見平穏で純粋に美しい作品だが、その辺りを意識すると、なかなか一筋縄では行かない、彼女ならではの複雑さと奥深さが感じられることだろう。
11月の個展では、世界はもしかしたら◯◯の中にあるのではないか?というテーマでの新鮮な展示を予定している。
2014-08-30-04-15-45



宮崎敦

成安造形大卒。彼の作品が持っている魅力のひとつは、作品そのものが、理論と感性がせめぎ合う強烈な磁場となっているところだろう。理性では、スーパーやドラッグストアにおける販促物やPOPなどがガチャガチャとひしめき合っている様が、大量消費社会への警告のようにも捉えられるが、一方では、そのあまりにも楽天的な雰囲気が、作品のバイタリティとしてイキイキと輝いているのに驚かされる。恐らく彼自身が、それらのモチーフに魅入られ、感性を開放し、喜々として筆を走らせているのだろう。
一見するとダイナミックで、ちょっと騒がしくもある画面だが、ストロークは確かで、汚れた感じは微塵もない。そして中心を持たない構図にも、背後に強い統率が効いており、作品としての完成度はとても高いことに気付くだろう。
来年1月の個展は、インスタレーションを含んだ面白い展示を見せてくれるようである。
2014-08-28-12-32-04