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2014年10月

アート見て歩き〜原田佳苗 展〜

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今日はKUNST ARZTで原田佳苗 個展
〜あなたの側を離れない。〜を見ました。

原田さんは今年京都嵯峨芸術大学を卒業して、今回が卒業後の初の個展ということです。大作から小品まで十数点のペインティングと、コンセプチュアルなオブジェもありました。

大胆にデフォルメされ、一見奇妙な頭部が最も印象的です。色彩は明るくポップですが、同時に重量感というか、若手作家にはあまりない風格すら感じさせる作品群でした。

タッチは伸びやかで、深いグラデーション、フォルムの的確さと滑らかさ。画面からは旺盛な生命力が放射され、それと同時にその背後に知的な頭脳の働きも感じます。

アーチストステートメントで原田さんは「…私は制作において、目の前の光景を、まず言葉にしてから画面を作り出します。言葉は私にとって、絵を描く大切な一部です。今回の出品作品も、私が日常や世界の出来事の中で感じたことを
言葉と絵を用いて表現しようとしたものばかりです…」と述べています。

物を見る柔軟な視点、それを言葉として定着させる冷静さ、イメージへと昇華させる強い集中力とエネルギー。力強く、ユニークな美の息吹を感じさせる原田さんの、これからの活躍を期待させる充実した内容の個展でした。

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文字を使った大作。コンセプチュアルな要素が浮き足立たずに絵としての面白さに通じている。

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奇妙なポーズと表情ではあるが、堂々として独自のリアリズムを放つ肖像画。

http://www.kunstarzt.com/top/top.htm

アート見て歩き〜鶴井かな子 展〜

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昨日はもうひとつ、GalleryMorningの鶴井かな子 個展を見ました。

作品には市井の人々の暮らしが力強く描かれています。その個性的で存在感のある描写には、特有の毒があるのですが、それはけしてグロテスクなものではなくて、現代を生きる人間たちの姿と心を気リアルに描き出すものです。

その日常はほんとうにリアルな日常過ぎて、見ていて思わず笑ってしまうような場面が舞台です。家でテレビを見ている、お店の調理場、下町の通り、学校の校庭、混み合った銭湯、通勤電車を待つ駅のプラットホーム…書いているとなんとも普通で平凡なのですが、鶴井さんが描くととてもエキセントリックで興奮した場面になります。

この緊張感のある画面。平凡な日常生活の中に潜む異常性。誇張された欲望の形などは、あのネーデルランドの巨匠ブリューゲルを彷彿とさせるものがあります。

優れた人間観察、誇張されていながら、しかも納得させる描き方、舞台設定の、一見普通そうで、でも本当は普通でないような世界。
鶴井さんの描くものはある意味で現代の黙示録とも言えるのかもしれません。

鶴井さんのこの鋭さ、バイタリティ、筆力をもってして、混沌として先行きの見えない、末期的なこの今をどう切り取って行くのか、ブリューゲルのように強烈な世界の終わりを描いてくれたら、きっと凄いだろうな、などと、私は勝手に想像を膨らませたくなりました。

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http://gallerymorningkyoto.com/

アート見て歩き〜澤田 華 展〜

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昨日はKUNST ARZT で 澤田 華 個展〜Second contact〜を見ました。

展示室には上から美しい鳥、お洒落なホテルの部屋、美味しそうな料理、雄大な景色という風に、写真が帯のように繋げられて展示されています。これらは澤田さんが直接撮ったのではなく、雑誌や本から撮ったものです。
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人々の欲求を満たす為に無数の写真が生まれ、インターネットや雑誌に溢れかえっているけれど、それらは複製に過ぎない。澤田さんはそれを再確認するかのように、敢えて目の粗いインクジェットプリントを使用。また写真と写真の間にプリントミスのようなノイズが入れてあるのも面白い演出です。

私はこれらの作品から、自分を取り囲む世界が遠ざかって行ってしまうような、曖昧さの中へと消えて行ってしまうような物悲しさを覚えました。

澤田さんのステートメントに「いつも作品の根底には、写真というメディアへの疑問や興味があります。例えば、印刷された写真が紙とインクという物質からなる二次元の平面であることと、それが三次元的空間に感じられることとのギャップや、繰り返し複製されるうちに生じる微妙な差異などです。」とあるとおり、澤田さんの関心はそのギャップ感をどう表現するかに集中しています。
なのでそこに飾られた写真をただ見るのとは違うアプローチを鑑賞者に求めていると言えるでしょう。

今回の展示には澤田さん自身が毎日撮っているというスナップ写真のファイルもあって。こちらは特に共通したもののない、身近な世界がバラバラに撮影されています。

その親密さ、意外性、生々しい日常のようなものは、けれど複製に過ぎない。写真だからという理屈を超えて、今自分が生きていることすら、幻影でしかないのではないかという気にさせられます。そういう思いで見つめていると、なんだかとてもそれらが愛おしく、かけがえのない世界のようにも感じられます。

先ほどのステートメントの後半に、「「表現したいこと」は元々私の内にはなく、外部との接触をきっかけに生まれるものです。」とありますが、この言葉は消極的な意味ではなくて、人の心や心理というのは常に世界との関わりによって生成されているのに、人はそれを最初から自分の中にあったものと盲信して疑わない、そのことへの警鐘とも示唆ともなるものだと思います。そしてこれはアートというものづくりにおいて、忘れてはならない大切なことでもあるのです。

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http://www.kunstarzt.com/top/top.htm

いのくま亭なう

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今月のギャラリーいのくま亭は
銅版画作家のまりもったんです。
ユニークでユーモラスな独特の世界。
東京、京都、そして作者が長く住んでいたフランスをテーマにした作品展です。
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また、2階のコレクションルームでは、今後個展を予定しているアーチストの作品をご覧いただくことができます。
階段が急なので不便ですが、、。
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いのくま亭はひとりのアーチストの展示を行う個展と複数のアーチストによる常設展を隔月毎に交互に行って行きます。
来月は山原晶子の個展。12月は常設展。1月は宮崎敦の個展。2月は常設展。3月は水野悠衣の個展です。

いずれもギャラリーいのくま亭が選りすぐった才能豊かな精鋭です。じっくりとご覧いただきたく思っております。

http://galleryinokumatei.flips.jp/

アート見て歩き〜トンネルビジョン展〜

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アート見て歩き〜トンネルビジョン展〜

今日はKUNST ARZTで桝本佳子さんキュレーションによる展覧会〜トンネルビジョン展〜を見てきました。

トンネルビジョンというタイトルは、鑑賞者が自然に見るのではなく、わざわざ覗き込むような作品を意味しているとのこと。

桝本さんが、よく知るアーチストの作品を、いつもと違う見え方で見せてみたらどうか? という着想で、それぞれ依頼した作品が一堂に集っています。

桝本さんご本人の「壺/トンネル」は、そんな本展のプロローグとして展示したもの。日常的な器を並べてトンネルを創り上げ、全く新しい空間に変化させる鮮やかさには、爽快さすら感じます。
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角田広輔さんの作品「展示台と壺と人物の積層」は、ギャラリーの中で実際に撮影されたもの。目に入る物と人とが重なり合い、意外な映像を淡々と積み重ねて行く。鑑賞者が目で真剣に追いたくなるようなスリルを感じる、不思議な映像。
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今村遼佑さんの「untitled」は、音によるインスタレーションとでも言うのでしょうか?。ヘッドフォンから聞こえるのは、これ以上ないほどの精度で広がりや奥行きを感じさせる音。ギャラリーの床に釘(コイン?)だとか、何か色々なものが落ちる音なのだけれど、それが脳内にとても心地よい刺激を与えてくれます。
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奥の部屋にある清田泰寛さんの「腹に降るヘアライン」は、木の骨組みの無骨な外観で、絵が描かれている面は裏側に…。鑑賞者は鏡に映ったその絵を見ることになります。この<普通には見られない絵>は、強烈な存在感を放つものでした。
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四人の先鋭な感覚を通して生まれた、トンネルビジョンというテーマへの力強いアプローチ。現代美術館にでもいるかのような充実した内容でした。


http://www.kunstarzt.com/top/top.htm










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